|
介護教育専門家の山本陽子です。 |
今回は2021年3月4日に開催された「介護外国人材と共につくる職場環境4ステップセミナー」内でいただいたご質問に回答させていただきます。
今回のご質問 Q1:介護外国人材の受け入れで日本人側からよく聞かれる悩み事は? |
では、さっそくはじめましょう!
Q1:外国人介護人材の受入れについて、日本人側からよく聞かれる悩み事は何でしょうか?
- よくある悩み事は、専門職としての「コミュニケーション技術」
- 悩み事を最小限にするためも外国人材の方に「やっていいこと」と「やってはいけないこと」をはっきりと具体的に伝えることが大切
コミュニケーションは、あらゆる人間関係でも、とても大切ですよね。「外国人材を採用して本当に良かった」というご意見が多く、どうにもこうにもならないといったご相談は、実はほとんどありません。さらに良くなるためのお悩み事として共通して挙げられるのは「コミュニケーション技術」ですね。
しかし、介護職はコミュニケーション技術が特に求められる専門職です。
挨拶や簡単なやり取りはできるものの、
- 認知症や失語症がある方など、利用者様の疾患に合わせた個別ケアに関するコミュニケーション
- 職員間のチームケアや多職種連携
- ご家族様との報連相を含めたコミュニケーションについて
などを今後の課題としてご相談を受けることがありますね。
もう一つコミュニケーション技術のお悩みとして、記録が挙げられます。
記録についてはリスクマネジメントとして、外国人の方が記録をしやすいように、
- 記録ごとに目的を明確化
- 記録用紙の簡素化(書きやすさ)
などの業務のサポートが必要です。
ゆくゆくは実地記録を書いてもらわないと現場が成り立たなくなってきます。
私が勉強になった話ですが、リスクマネジメントとしてご参考になれば・・・・・・
外国人材の方々と「職場のよりよいコミュニケーション」というテーマで座談会を行ったんです。
それぞれの職場で「もっとこうしてくれたら働きやすいのに」というような思いはあるのですが、課題として共通していたのが「文化の違い」だったんですね。
そこで「文化の違いに対して日本人はどういう配慮ができますか」と質問してみると・・・やってはいけないことをはっきりと教えてほしい、逆にやって良いこと、やらなければいけないこともはっきりと教えてほしいと言っていました。
「日本人がはっきりと言わなくて、やったら怒られた」とか、「やらなかったから怒られた、指導を受けた」ということに、理不尽さや働きづらさを感じているという発言が多く挙がりました。
そこから日本人や職場の上司への不信感につながっているという印象でしたので、やってはいけないことをはっきりと伝える、逆にやって良いこと、やらなければいけないこともはっきりと伝えるなど、具体的に示すことで余計なストレスがかからず、悩み事は最小限に留められると感じました。
Q2:生活面での支援はどこまですればよいでしょうか?
- 住居の準備は、一度に経済的な負担がかからないよう配慮して支援をしている法人が多い
- 暮らしに必要な話題を通して、その人にとっての都度の必要な生活の支援が見つかる
外国人材の中には国内外から引越しを伴う形で就労される方もいます。
在留資格や法人様のお考えによって支援方法は異なりますが、日本の生活になじめないと仕事にも集中できません。
住居の準備をはじめ、生活面での支援は大切ですよね。
住居の準備では下記のようなパターンがあります。
- 法人様がすべて家具を買い揃えている
- 一部補助金を出している
- 有料のレンタルで最終的には外国人材の方が買い取る
いずれも一度に経済的な負担がかからないように配慮されていますね。
職員の方々から使える家具などを募って揃えたというところもありましたよ。
生活面での支援はプライバシーもありますし、どこまで踏み込んで良いのかお悩みの指導者も多いかもしれません。
オリエンテーションや休憩時間に
「食事はどうしていますか」
「ガスや水道代の支払い手続きは終わりましたか」
「病院に行きたいときは教えてくださいね」
など暮らしに必要な話題を話してみましょう。
実は想像していなかったことで困っている、逆に心配していたことには全く問題がないことに気づく場合があります。
ある施設の指導者のお話で素晴らしいなと思ったエピソードをご紹介します。
外国人材の方が最初はお弁当作っていたけれど、入職後2ヶ月目ぐらいから1週間に2回ぐらい施設食を頼むようになったそうです。
その様子から指導者は「日本食にも慣れてきて、施設食を頼むとお金もかかるけれど日本での生活のやりくりができるようになってきたのかな」と感じ取られていました。
しかし、
「施設の給食を頼んでいるんですね」
と声をかけると
「実は、疲れがたまっていて、お弁当作る気力がないんです」
という反応が返ってきたそうです。
些細なことでも気軽に声をかけ合える関係が、その人にとっての都度の必要な支援につながると思います。
Q3:一部の職員が特定技能の外国人に対して理解を得られません。どうしたらいいでしょうか?
- 面談などで、職員の思いをヒアリングをする
- 外国人材採用の目的や目標の説明をし、外国人材の母国や文化への理解を深める工夫をする
どうして一部の職員の方々が理解を示さないのでしょうか。
きっと、理解を示さない理由があると思います。
例えば過去に不快や悪印象を持ってしまうような経験があったり、業務負担が増えるんじゃないかと心配されていたり・・・。
そんなときに、
「外国人材が一緒に働きます。協力してください」
と言われ、きちんとした説明もなく外国人材が働き始めていれば、ウェルカムの気持ちにはなりづらいですよね。
面談などで、職員たちがどんな思いを持っているか聴いてみてもいいですね。
すでに特定技能外国人の方々が入職されていても、今一度、外国人材採用の目的や目標の説明をしましょう。
さらに会議での共有や、外国人材の母国や文化への理解を深める研修をおすすめします。
日本人職員に協力していただかないと、外国人材の受け入れは上手くいきません。
休憩時間などの日常場面で日本人職員と外国人職員との会話のきっかけを作ったり、外国人職員の奮闘をさりげなく伝えたりしてみましょう。
管理職の小さなフォローの積み重ねは外国人材とのチーム意識を高めますよ。
Q4:当校は、介護福祉士の国家試験合格を目的とした日本語学校と専門学校(介護福祉士養成校)の一貫教育を行なっております。
学生の期間に学校でこのようなことを身につけてほしい、ということがあれば教えてください。
- 挨拶、身だしなみや接遇、報連相などの社会人基礎力を身につける
- 介護技術は現場での指導が基本となるが、アルバイト先にシラバスを共有することで教育の目安になる
アルバイト先で求められる介護技術は、現場の指導が基本になります。
それらを踏まえて、社会人基礎力が備わっていると喜ばれますね。
留学生は介護福祉士養成施設で資格取得のための規定の教育項目(時間数・内容)のもと、実習では介護計画を立案・実施しています。
たとえば1年生で「介護の基本Ⅰ」を学び、2年生になってから「認知症ケア」を学んでいます。
しかし施設やデイサービスなどサービス種別によって、利用者様のADLや特徴が違いますよね。
さらに同じアルバイト先でも時間帯によって従事する仕事内容が異なります。学校が終わってからアルバイトをする学生は、夕食から就寝にかけて入浴介助やレクなどの日中の介助がない時間帯に従事し、学校がない日にアルバイトをする学生は、起床介助、食事、入浴介助、排泄介助、レクリエーションと一連の介助がある時間帯の従事になります。
現学年のシラバスを共有することで「入浴の演習は後期」「高齢者の身体についてはすでに学んでいる」など、アルバイト先での教育の目安になると思います。
社会人基礎力としては、挨拶、身だしなみ、日本語を含めた言葉遣いなどの接遇、報連相などが挙げられます。
たとえば昨年はコロナによって授業や実習の変更があった学校がありましたが、きちんと連絡しておらず、せっかく入れてくださったアルバイトに入れないといったケースもありました。
遅刻、欠勤、体調不良など、現場に迷惑をかけないという意味でも、社会人基礎力が必要だと感じています。
これは卒業後も同じです。就職先で求められる介護技術、職能は違いますが、接遇や報連相の基本ができていれば教育しやすく、喜ばれますね。
~回答してくれた先生~
山本 陽子 先生 介護職として従事した後、人材育成や職場環境づくりを支援。 |