入職して1ヶ月目の外国人職員が勝手に介助をします。
指導者が外国人職員と常に同じ行動をするわけにもいきません。
どのように指導すればよいでしょうか。
- 教育計画に準じて、各項目の目標達成を明確にし、本人に説明する
- 本人のやる気を尊重し、安全確保の重要性を指導する(理解させる)
- 職員と教育の進捗を共有し、協力体制を強化する
教育項目の目標達成までの4段階
ご質問ありがとうございます。利用者の事故につながりかねない状況ですね。
教育項目の目標達成までには、大きく次の①~④の段階に分かれます(図1)。
① できないこと
たとえば、ご質問にある外国人職員のように入職1ヶ月目の場合では、医療的ケアや立位保持ができない利用者、重度の認知症患者で理解や判断力が低下している利用者など、いわゆる危険度が高い利用者への介助です。
② 誰かと一緒であれば、できること
指導者や日本人職員が行う介助を見学、または、指示に基づき、一部ができる(やってもいい)介助です。
③ 誰かが見守っていれば、できること
指導者や日本人職員が同行し、助けてもらえる状況であれば、できる(やってもいい)介助です。
④ 一人でできること
教育項目の目標達成を意味します。その職場で求められる職能です。
ご質問の外国人職員は、自らが①から④のどの段階にいるのかわからないのかもしれませんね。
ですので、誰が現状を評価し、根拠をもって次の段階に進めていくのか(だれが合格と判断するのか)を明確にし、本人に説明しておかなくてはいけません。
説明・指示出しの際には、「やってはいけません」「やらない」と断言します。
「いつもはできませんが、○○○の時はやります」「○○○が基本ですが○○○の時はやってもいいです」と例外を示すと、語尾を受け取ってしまい、誤解させることがあります。
断言だけでは外国人職員は納得しづらいので、相手の日本語力にもよりますが、私はこんな風に伝えます。
「一人で食事介助はやりません。事故が起きます」
「一人で移乗はやりません。転倒します」
「一人で薬を配りません。間違えたら、怖いです」
そのときに表情や語調に細心の配慮をし、必ず、笑顔で「いいですか」と相手の意思を確認しています。
返答時の相手の表情や態度も、現在の業務に対する、指導のアセスメントになります。
不安そうにしている場合は「いつぐらいに次(合否)の指示を出すのか」を伝えるとよいですよ。
外国人職員の思いへの配慮
さて、指導者からすれば「勝手にやってしまう外国人職員」でも、本人にはいろいろな思いがあります。
たとえば
● 自分にもできると思っている
● 期待に応えたいと思っている
● 役に立ちたいと思っている
なかには「職場の一員として認められたい」「職場での居場所を作りたい」「出来が悪くて解雇されたくない」など、切迫した思いが潜んでいることがあります。
外国人職員の気持ちを尊重したうえで、安全に対する危機意識が持てるように教育指導を強化しましょう。
転倒や骨折など、具体的な例を挙げ説明することで、事故のイメージがしやすくなります。
協力体制の強化
あと1点、職員に協力を依頼し、協力体制を強化することも重要です。
指導者はシフトを合わせていても他業務があり、常に一緒にいるわけにもいかず、職員の理解と協力がなければ、外国人職員は働き続けることはできません。
外国人職員が「勝手にやる」状況の背景には、当日一緒に勤務している職員が
● 自分が指示を出していいのかわからない
● 指示を出したいが、何を、どんな風に指示していいのかわからない
● 外国人職員に無関心、不親切(=外国人職員が聞きづらい)
といった事情もあります。
さらに現場は忙しいので、担当業務をしているうちに
● 気が付いたら、外国人職員が危険行為を勝手にやっていた
ということが起きてしまうのです。
事故が起きず、うまくいっていると、職員は「助かる」「忙しさが緩和できる」と有難がり、なかには「外国人職員に業務を押し付ける」という事態が発生していた職場がありました。
事故が起きていないからといって、そのままにしてはいけません。
指導者が不在になる場合は、指示や見守りをしてほしい職員(Aさん)に直接、指導者がお願いしましょう。
外国人職員にも「Aさんに聞いてください」と伝えます(二人同時に説明すると、丁寧ですね)。
また、そのことを当日出勤職員に周知できるようにしましょう。
たとえば、勤務表やその日の業務担当表に印をつけておくとわかりやすいです。
簡単なことや、その場で解決することは、すべての職員が教えるのは当然ですが、「どこまで」「何を」など判断が困るものは、Aさんへの確認を徹底することがポイントです。
外国人職員と日本人職員が、事故防止に努められる指導・体制をつくっていきましょう。
~回答してくれた先生~
山本 陽子 先生 介護職として従事した後、人材育成や職場環境づくりを支援。 |