従業員のスキルアップについては、各企業で多くの施策を実施し、日々このレベルアップに努めておられるところだと思います。
スキルアップのための研修費を企業が負担することもあるでしょう。
この企業努力を後押しする「人材開発支援助成金」という制度があります。
これは、厚生労働省所管で、労働者の職業訓練開発を実施した時の経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。
今回は、人材開発支援助成金の概要や申請方法を解説します。
外国人雇用をしている企業の課題としての人材育成
日本企業に採用された外国人にとって、社内外での日本語によるコミュニケーションは、必要不可欠です。
社内でのコミュニケーションのほかに、顧客との接点において、特にその必要性が増します。
また、業界によっては資格取得が推奨され、その資格試験は当然のことながら、日本語で実施されます。
肝心の職務上の知識や経験は十分であっても、日本語力がネックとなって資格取得に至らず、正当な評価がされていない従業員も多く存在します。
これは一個人の問題ではなく、外国人雇用を行った企業全体の課題として、捉えていくべきことだと思います。
人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)の概要について
人材開発支援助成金には、全部で7つの種類があります。
ここでは、特にニーズが高いと思われる「特別育成訓練コース」について解説します。
「特別育成訓練コース」とは、訓練対象者が外国人であるか否かにかかわらず、有期契約労働者に対して、正社員への転換または処遇改善を目的として、事業主が計画に沿って訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
ちなみに、有期契約労働者以外(正社員)を対象としたコースもあり、人材開発支援助成金(一般訓練コース)と呼ばれています。
<対象となる訓練>
有期契約労働者等に対し、正規雇用労働者に転換または処遇を改善することを目的として実施するもので、以下の①~③のいずれかに該当するものが対象となります。
① 一般職業訓練(Off-JT)
② 有期実習型訓練(ジョブカードを活用した2~6ヶ月の職業訓練)
③ 中小企業等育成担い手訓練
このうちよく利用されるのは、① 一般職業訓練です。
Off-JTとは、企業の通常の業務と区別して実施する座学・実技をいいます。
例えば、介護施設で外国人材を雇用している法人が、外国人材のスキルアップ研修を実施したいと考えている場合、利用者に話しかけながらの生活援助や介護はOJT、介護の日本語研修はOff-JTにあたります。
<支給要件>
従業員に対し、計画に沿って訓練を実施した場合に、訓練経費や賃金の一部などを助成します。
予め教育訓練計画を提出することが必要で、事後的な申請は受け付けられません。
<支給金額>
条件によっても異なりますが、一般的なOff-JTの訓練の場合
- 賃金助成が、1人1時間あたり760円。(生産性要件という特別な要件を満たせば960円)
- 経費助成は、条件によって10万円~50万円が支給されます。
<申請手続>
手続きとしては
1. 訓練計画を作成して労働局に提出
↓
2. 計画に沿った訓練実施
↓
3. 支給申請書提出
という流れになります。
社会保険労務士は、こういった助成金申請手続きのプロです。
顧問社労士等がおられる場合は、制度の詳細も含めて、ご相談されることをお勧めします。
<所管官庁と照会先>
本助成金の詳しい解説については、下記のURLをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
これらの助成金の支給要件の確認や手続きの詳細については、下記URLにある各府県の労働局やハローワークにご照会ください。
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html
まとめ
いかがでしたでしょうか。
人材開発に関する助成金は、毎年、大なり小なり制度変更が実施されており、常に最新の情報を把握しておくことが大切です。
今回ご紹介した人材開発支援助成金「特別育成訓練コース」は、全体の中の一部に過ぎず、制度の全体像はどうなのかというのは、また機会を設けてご紹介していきます。
一般的にこうした公的助成金は、広く知られていないことやその手続の煩雑さなどの理由で、申請さえしない事業所がほとんどです。
しかし活用方法によっては、企業課題としての積極的な人材育成につなげることができ、ひいては従業員の福祉に役立ちます。
ECCの外国人支援では、外国人材への日本語研修を実施しております。
是非お気軽にご相談ください。