グローバル化、ダイバーシティの推進により、最近では留学生や外国人材を積極的に採用する企業も増加しています。
今まで日本人部下しか持ったことのない上司の方は、様々な考え方や価値観を持つ外国人部下とのコミュニケーションで、このような悩みや不満を抱えることも多いのではないでしょうか。
「コミュニケーションの取り方がわからない」
「伝わっているのかどうかわからない」
「なかなか指示通りにやってくれない」
「期日を守ってもらえない」
同じ言語を話し、似たような文化背景で育ってきた日本人同士では、1から10まで話さなくても、相手の言いたいことが何となくわかることがよくあります。
日本には「空気を読む」「行間を読む」という言葉があるように「言葉でコミュニケーションを取らずとも、相手の考えや気持ちを汲み取る」という日本独特のコミュニケーション方法もあります。
しかし、異なった文化で育った外国人材にとっては、言葉で伝え合わずして、これらの情報をキャッチすることは非常に難しいことです。
これまで様々な国の人と仕事をしてきた筆者自身も、外国人の同僚から
「上司の言っている意図がわからない」
「なぜそのように言ったのかわからない」
「何が聞きたいのかわからなかった」
という悩みや不満をよく耳にしてきました。
そしてこれらは、聞き手の問題だけではなく、話し手の「伝え方」に問題がある場合がほとんどだったのです。
上司の中には、日本人部下であっても年齢やバックグラウンドが異なると、部下の話の意図を汲み取れないことがあります。
育ってきた環境や文化背景、年齢や価値観など、働く人材が多様化するほど、上司はコミュニケーションの図り方、特に伝え方をより工夫する必要があるのです。
外国人材とのコミュニケーションの基本を知り、相手が受け取りやすい伝え方を身につけることで、外国人材が理解しやすい指示を出し、質の高いコミュニケーションを図ることが可能になります。
本記事ではすぐに実践できる方法をご紹介します。
共にパフォーマンスを発揮しやすい強いチーム作りに繋げていきましょう。
外国人材とのコミュニケーションの基本
- 言葉を相手に合わせる(伝わりやすい日本語を使う)
- 表情や話すスピードなどの非言語コミュニケーションを意識する
まず大切なことは、使う言葉を相手に合わせるということです。
特に外国人材とコミュニケーションを取る際は、まず外国人材の現在の日本語レベルを知ることが必要です。
外国人材の持つ日本語レベルに合わせて、下記のような工夫ができます。
- 一文を短く、主語述語を明確にする
- カタカナ語は使わない
例)アジェンダ、エアコン、キャンセル - あいまいな表現をしない
例)できれば~してください、大丈夫です、できないこともないです - 専門用語は、その単語の後に意味を説明する
このように、相手に伝わりやすい日本語で会話を重ねるようにしましょう
言葉を相手に合わせるだけでなく、非言語(ノンバーバル)コミュニケーションを意識することも大切です。
非言語(ノンバーバル)とは「言葉を用いない」表現のことで、表情や声のトーン、話すスピード、ジェスチャーなどがこれにあたります。
有名なメラビアンの法則*でもあるように、私たちは視覚や聴覚から多くの情報を得ており、その受け止め方に大きな影響を与えているのです。
例えば、怒った顔をしながら「怒ってないよ」と言っても、相手はこの人は怒っていると感じますよね。
*メラビアンの法則・・・態度や表情などの「視覚情報」、声のトーンや話すスピードなどの「聴覚情報」、単語や話の内容などの「言語情報」が矛盾している場合に、非言語情報(視覚情報・聴覚情報)が聞き手に与える影響が93%というもの。
大切なことは、外国人材のノンバーバルをよく観察することです。
相手が悩んでいる時は自分も同じ姿勢で寄り添い、喜んでいる時は同じ姿勢で喜びを表現してみましょう。
日本語をゆっくり話している人材には、ペースを合わせてゆっくりと返答をしたり、質問をしたりします。
非言語コミュニケーションを意識的に合わせるだけで相手が安心し、心の距離を縮めることができます。
相手が受け取りやすい伝え方
- 結論から話す「PREP法」
- 口頭だけでなくメールやメモなどを活用する
言葉と非言語を相手に合わし、安心して話せる雰囲気を作ったあとは「伝え方」を工夫します。
日本語は言語の文法上、結論が後にくる、という特徴を持っています。
そのため、最後までしっかり話を聞かなければ、本当に伝えたいことが伝わりません。
またこの日本語の特徴に加えて
「相手に察してほしい」
「直接的な表現で傷つけたくない」
という日本人特有の思いから、私たちは特にオブラートに包んだような表現をしてしまいます。
これでは本当に伝えたい意図は外国人材に伝えることができません。
伝える力を高めるためには、まずは「目的」「結論」から話すことを心がけます。
その方法としてPREP法というスキルを使ってみましょう。
PREP法とは、結論→理由→具体例で話す方法で、下記の言葉の頭文字です。
■ P:POINT = 結論やポイント、要点を述べる |
■ R:REASON = 理由を述べる |
■ E:EXAMPLE = 事例、具体例を伝える |
■ P:POINT = 再度、結論や要点を繰り返す |
例えば、下記のような使い方です。
■ P(結論) 「私の提案は◯◯です。」 |
■ R(理由) 「なぜなら現在、当社には◯◯という課題があり、◯◯に向けて、それを解決するためです。」 |
■ E(具体例) 「例えば、◯◯を取り入れると▲▲という結果が出ています。そして◯◯で■■の実績も出ています。」 |
■ P(結論) 「よって、私は◯◯を提案します。」 |
PREP法を取り入れることで、聞き手ははじめの段階で話の全体像がわかり、理解しやすくなります。
さらに主張が一瞬で聞き手に伝わるので、ストレスがかからず情報が受け取りやすくなります。
加えて、コミュニケーションの量や方法にも工夫が必要です。
日本人とのコミュニケーションでは1回で伝わることも、外国人材の場合は、複数回コミュニケーションをとり、正確に伝わっているか確認しましょう。
- メールで伝えたことは口頭でも確認をする
- 口頭で伝えたことはメモや書面でも伝えて確認をする
など、様々なコミュニケーションのツールを使いながら、やり取りの量を意識して増やすようにしましょう。
まとめ
今回の記事では「外国人材とのコミュニケーション基本のコツ」と「相手が受け取りやすい伝え方」についてご紹介しました。
外国人材がより受け取りやすいコミュニケーションを心がけ、チーム内の連携を強化していきましょう。