介護専門家山本先生のQ&Aコーナー(第7回)

今回はこのようなご相談が寄せられています。

介護職員の不足は施設運営の重要な課題です。
外国人材の採用を視野に入れた人材計画の見直しを行っています。
外国人材受け入れのメリットや成功事例を教えてほしいです。

メッセージありがとうございます。
近年の時世に伴い、地域によっては人材不足が緩和されたところもあれば、感染予防等による緊張感や繁忙がきっかけで離職が増えたところもあり、人材計画に見直しや変更がなされた法人は少なくありません。

現在外国人材を雇用している施設は、課題解決ごとに「ひと安心」を積み重ねている最中だと思います。
今回は外国人材受け入れの成功事例について、以下のポイントで解説します。

ポイント

  • 自施設の業務改善・環境整備ができる
  • 自施設や個人の職能の振り返りができる
  • 外国人材の行動や質問に対して新しい視点が加わる

自施設の業務改善・環境整備ができる

外国人材を受け入れるための準備は、職場の現状を見直す機会でもあります。
多くの現場では、配置場所や保管方法、処理方法などにやりづらさを感じていても、事故にはなっていないため、改善に繋がっていない場合が多かれ少なかれあるようです。

外国人材の受け入れ準備のために、「自分たちが」ではなく「外国人職員だったらどうか?」と置き換えて職場を見直すことで、「改善すべき点を再認識した」「課題等の意見を上司に言いやすくなった」という声を聞きます。

ある管理職は、そういった中で「働きやすさ」だけではなく「働きづらさ」にも着目できたと話していました。

自施設や個人の職能の振り返りができる

入職後2ヵ月の外国人職員について、ある施設の指導者に近況を伺っていた時のことです。
「最初は言葉づかいが丁寧だったのに、最近は利用者に慣れ慣れしいので、利用者からお叱りを受けることがある」と眉間に皺を寄せました。

その話を隣で聞いていた施設長が会話に割って入るように
「お叱りを受けたことは私たちの責任です。彼女たちは、私たちを真似ているだけです」
と指導者を諭した後
「施設の新しい課題として、真摯に向き合っていきたいと思います」
と決意を新たにしていました。

利用者と介護職員との間に信頼関係ができていると、介護職員のカジュアルな言動を利用者が不快に感じない場合や、寛大に受け取ってくれる場合があります。
もしかしたら外国人ということで注目を浴びる分、厳しい目で接遇を評価されていたのかもしれません。

施設長は「今後も外国人職員のおかげで自覚できていない課題を発見できるかもしれない」と期待を寄せていました。

外国人材の行動や質問に対して新しい視点が加わる

先日、ある指導者は外国人職員の利用者へのかかわり方・視点が、介護に対するピュアな気持ちを思い出させてくれて、感謝していると話してくれました。

たとえば
「どうして、Kさんはレクリエーションに参加しませんか」
→誘った回数だけ、断られる利用者に、いつの間にか声をかけなくなり、「誘ってもやらない人」というレッテルを貼っていたと気づいた。

「無理やりでもお風呂に入ってもらわないといけませんか」
→自分たちの対応が無理やりに見えていたことや清潔保持に注目するあまり、本人の気持ちに寄り添っていなかったと気づいた。

「Hさんの車いすの自走はどうしてだんだん左へ曲がりますか」
→日本人職員にとって車いすは、左片麻痺のあるHさんの「移動介助の手段」として考えていたが、外国人材のことばを聞いて、Hさんの意欲や動きたい思いを察することができていなかったと気づいた。

日本人職員と外国人職員の日々の会話があってこその気づきですよね。
日本語が未熟な分、状況把握が難しい外国人材は、より一層注意深く利用者を観察しているのかもしれません。

まとめ

今回は「外国人材受け入れのメリットと成功事例」について解説しました。
外国人材を受け入れたことで「職場の改善につながった」「業務効率化が進んだ」「介護の本質を思い出させてくれた」というご意見が多いです。
私自身も日常会話や質問の中にある外国人職員の視点に、感動や反省することがしばしばあります。

外国人材受け入れの参考になりましたでしょうか。
準備や体制づくりに労力はかかりますが、事前に備えて成功に結び付けていきましょう。

※事例は個人情報・プライバシーの保護に配慮して編集しています。

山本陽子 ~回答してくれた先生~

山本 陽子 先生
㈱ケア・ビューティフル 代表

介護職として従事した後、人材育成や職場環境づくりを支援。
また、留学生や外国人介護人材の教育担当も務める。
「書いて覚えて活用する!介護の日本語ドリル」など教材・著書多数。

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